土地活用ラボ for Owner

コラム vol.181
  • 不動産市況を読み解く

賃貸住宅の空室率について考える

公開日:2016/11/30

賃貸住宅はいま、バブルなのか?という聲が聞かれる。全國紙でも賃貸住宅の空室率の高さが取り上げられて、あす新聞では社説でも、「賃貸住宅バブルを抑制せよ」という文面があった。はたして、それほどまでにバブルなのだろうか?

國土交通省の「住宅著工統計」によると、新築住宅の「貸家」に該當する賃貸住宅は昨年1年間で約37.8萬戸建設されている。バブル期以降の1991年から1昨年2014年までの平均は約47萬戸であるからそれよりも9萬戸程度少ない計算になる。とくに、リーマンショック以降は急激に新築數が減り、2012年ごろからやっと回復してきたという流れだ。2012年から、4年連続で増加しているものの、ここ25年の平均でみると、決してその數は多くない。

今年2016年はどうかというと、1月~9月(10月末時點最新データ)ここまで、約30.5萬戸で昨年が27.9萬戸であるから+9.6%の伸びをしめしている。このペースならば、前年37.8萬戸×1.096で約41.4萬戸となる。この伸びは、消費稅が5から8%に上がった際の駆け込み需要が起こった2013年の12%に次ぐ、近年では大きな伸びとなっている。

賃貸住宅については、「最近、新築が建ちすぎではないか」という議論と「賃貸住宅の空室が多い」と2つの議論があるようだ。前者については、先に述べたとおりで、ここ數年をみると、確かに2012年以降毎年少しずつ増えている。そして2016年の伸びは、(いまのペースなら)10%弱と、かなり増えている。しかし、1991年以降の25年の平均で見るとそれほど多くない、というのが事実である。

では、「賃貸住宅の空室が多い」に関してはどうだろうか。
賃貸住宅の空室率は、総務省資料によると全國平均は20%となっている。

賃貸住宅の空室率

No. 都道府県 空室率 No. 都道府県 空室率
1 沖縄県 11.2% 2 宮城県 11.5%
3 福島県 13.9% 4 鹿児島県 15.6%
5 島根県 15.7% 6 福岡県 15.8%
7 宮崎県 16.0% 8 東京都 16.2%
9 京都府 16.5% 10 熊本県 16.7%
11 佐賀県 16.9% 12 神奈川県 17.3%
13 巖手県 17.3% 14 鳥取県 17.8%
15 兵庫県 18.4% 16 高知県 18.5%
17 愛知県 18.5% 18 長崎県 18.6%
19 大分県 18.7% 20 埼玉県 18.8%
21 山口県 19.1% 22 山形県 19.1%
23 北海道 19.2% 24 滋賀県 19.3%
25 千葉県 19.9% 26 秋田県 20.1%
27 大阪府 20.2% 28 広島県 20.3%
29 新潟県 20.8% 30 愛媛県 21.3%
31 岡山県 21.6% 32 奈良県 21.6%
33 香川県 22.1% 34 三重県 22.3%
35 石川県 22.5% 36 徳島県 22.6%
37 富山県 22.7% 38 青森県 22.9%
39 和歌山県 23.3% 40 長野県 24.1%
41 福井県 24.2% 42 靜岡県 24.6%
43 岐阜県 26.0% 44 茨城県 26.6%
45 群馬県 26.9% 46 栃木県 27.5%
47 山梨県 29.2% 全國平均 20.0%

出典:平成25年住宅?土地統計調査 総務省統計局

総務省資料によると、一番少ないのは沖縄県で約11%、最も多い山梨県で約29%、東京都は約16%だ。しかし、メディアが報じる空室率は、ある調査機関のデータがよく使われているが、その報道では、大都市圏でも30%近い數字となっていることもある。果たしてこの違いはなんだろう?

空室率の算出方法に、明確な規定はない。たとえば、建て替えが決まっている物件では、退去した部屋の新規入居者の募集は行わないから空室になる。あるいは、大きなリフォームをする場合も、一定の期間募集は行わないから同様だ。こうした部屋をカウントするかどうかによっても異なる。
また、そもそも、総數(分母)をどうするかも調査主體により異なっている。
例えば、1棟すべて入居者がついている満室の場合の建物を総數(分母)に含めない、つまり空き室がある建物のみを総數としてその空室率を算出すると、當然のことながら空室率が高くなる。このようなデータをみると、「賃貸住宅は飽和しているため、大都市でも30%近い空室がある」ということになってしまう。もちろん、賃貸住宅を一定のスパンで考えると、空室がでることは避けられない。しかし、想定以上に空室が発生する理由は、主に以下のような2つの理由であろう。

  1. (1)需要の少ないエリアに入居者ニーズにあっていない部屋をつくること
  2. (2)賃料設定が適切でないこと

こうしたことに気をつければ、それほど想定外の空室はでないと思われる。

空室率の算出の明確な定義が決められることが望ましいが、そうなっていない現在、メディアなどが報じるデータの算出根拠について、理解したうえで空室率について議論することが必要であろう。

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