稅理士リレーインタビュー 第24回 稅理士法人あすなろ 代表社員稅理士 稅理士 飯田修次様不動産の活用や売卻の判斷は難しいものです。お客様の背中を押し、支えられる存在でありたい。
公開日:2019/07/31
時代と共に相続対策も変化
インタビュアー(以下In):今は企業數が減っているため、資産稅を扱う先生が増えているとお聞きします。神戸でも同様でしょうか。。
飯田(以下I):最近は、資産稅専門の稅理士として開業する方が神戸でも増えているようです。法人のお客様を開拓するといっても、すでに誰かのお客様なわけで、開業したばかりの方が顧問となるのもなかなか難しいものです。
他の地域がよくわからないので比べようがないのですが、神戸は関西圏ですので、やはり関東に比べるとシビアだと思います。古くからの資産家の方々は割りと質素な方が多いですね。攻めに出るというよりは、オーソドックスに資産を守る傾向があるように思います。先日、農家の方のお仕事をさせていただいたのですが、稅務調査で相続財産の預貯金のことを「蓄財」といわれた際に、「これは蓄財ではなく、先代からの引き継ぎものだ」とおっしゃっていました。土地は自分のものではなく、預かりものだという感覚をお持ちなのです。
In:30年あまり資産稅対策をされてきて、時代と共に変化していると感じることはありますか。
I:私が開業した昭和62年はちょうどバブルが始まった頃で、活用というより不動産の取り引きが中心でした。お金を借りられるだけ借りて、不動産を買って、すぐに売るというような取り引きです。バブルがはじけてからは、不動産取り引きがほとんどなくなって、活用といった話が出てきました。バブルの頃は、それまで資産稅に攜わってこなかった稅理士も、収益が上がるということでこぞって資産稅業務に入ってきました。ところが、バブルがはじけた途端、ほとんど稅理士が資産稅業務から撤退し、逆に私は資産稅の仕事がやりやすい時期がありました。ここ4~5年は不動産を売る方が若干増えてきています。特に譲渡が増えたような気がします。
土地活用という言葉が使われ始めたのは、バブルで土地の評価が上がり始めた頃からです。當時の土地活用は賃貸住宅がほとんどで、ハウスメーカーさんがセミナーを開いたりして、土地活用の提案をかなりやっていました。相続対策で土地活用をすることもあり、それは今でも続いています。事業系はリスクが大きいので手を出しにくく、賃貸住宅は稅務効果が期待できるので、今も主流です。
In:個人のお客様の場合でも、法人化する方が増えていると聞きます。
I:私のお客様は、いわゆる個人の地主様が圧倒的に多く、ある程度の不動産を持っている方は法人化することが多いですね。法人といっても商売をしているわけではなく、不動産の管理會社です。法人化したほうが稅務上少し有利になる點は田舎でも都會でも同様です。また、お客様のほうから依頼されるケースもあります。皆さん勉強されているようで、法人にしたほうがいいとお考えになる方が多くいらっしゃいます。しかし、法人化をやめたほうがいい場合もあります。判斷のポイントとしては、建物の移転コストがかかってもメリットがあれば法人を作ります。建物ごと移さないと収入を移せないからです。管理だけではせいぜい10%くらいしか取れません。仮に収入が2000萬円あっても200萬円しか移せないので、メリットはほとんどありません。法人では當然帳簿をきちんとつけなければなりませんし、稅理士を顧問につけると報酬も発生します。それ以上のメリットがないと作っても意味がないのです。
ご高齢の方が法人を作って、今からビルを建てるというような話もあります。その場合、個人で建てたほうが相続対策の効果は大きくなります。法人で建てた場合、効果はすべて法人にいくので、メリットが半減してしまいます。株については、法人を作るとき、はじめから本人は株を持たないようにします。
相続?承継対策は家族の話し合いから
In:基礎控除が下がったことで申告が必要になり、初めてご相談に來る方も増えているようです。相続対策はどのようなことから始めていけばいいでしょうか。
I:最近は金利が安くなったせいもあって、住宅を購入される若い方が多くいらっしゃいます。そのため、親からお金をもらうケースが多く、住宅資金贈與以上にお金をもらう場合もあり、どのようにお金をもらうのか、建物の名義をどうするのかといったご相談があります。自身の終末期や死後の希望や思いを家族に伝えておくエンディングノートが一時流行り、遺言を書いたり、相続について考えたりする人が増えてきました。また、これからは長生きされる方が増えますので、認知癥の対策も増えると思われます。対策としては、認知癥が始まる前に遺言を書く、最近広く知られるようになってきた家族信託の契約を結ぶなどがあります。実際の相談でもまずは遺言を薦めますが、その前に財産の整理をしていることが大前提です。そのうえで財産をどのように分割するかが一番難しいところですから、分け方のご相談も多くお受けします。
In:遺言を書くときの注意點はございますか。
I:私どもの事務所では、遺言書の原案まではお手伝いしますが、遺言書自體は間違いがあるといけないので司法書士さんに任せています。作成した遺言書は公証役場に持っていくと、公証役場では公証人からいろいろ聞かれたりするので、そのとき初めて遺言を書いたという実感が湧いてくるのではないでしょうか。遺言は書くものというより、分割方法を決めるものです。まずは、遺言の內容を決める前に家族でしっかり話し合うことが大切です。決めた後は事務的に流れるので、決めるのが一番大事なところです。
In:お客様の人生計畫の深いところまで入られていらっしゃるのですね。その延長線上に承継問題も出てくるかと思います。
I:承継問題は多くはありませんが、最近の例では醫療法人の事業承継がありました。2年後に引退できるように、そこに向けて5年くらい前から計畫してきましたが、そんなに簡単ではありませんでした。親子ゆえの難しいコミュニケーション上の問題があり、本當にうまくいくのだろうかと心配されています。さらに、他でうまくいかない場面をよく見るそうで、自分も持ち分を渡していいのかどうか不安になっておられ、今はストップしています。場合によっては、他人に売ることまで考えているようです。実際に方向性が決まったら計畫を立てて、計畫に沿って粛々と行動していけばいいのですが、その方向性がなかなか定まらないのです。こちらからこうしてくださいとも言えないので、様子を見て対応するしかありません。これは個人でも同様にいえることです。
In:個人においても、承継、相続というのは難しいようですね。
I:個人の土地活用の事例で、複數の賃貸マンションに加えて駐車場もお持ちのお客様がいらっしゃいます。大きな土地で區畫整理地があ り、大和ハウス工業の賃貸住宅を建てることになりました。土地が3筆あり、そこに賃貸住宅を建てるのですが、分割の方法が決まっていません。お子様は2人いらっしゃって、誰がどの土地を取得するかという話がなかなか進みません。他の土地も名義がバラバラになっているので、整理してあげたいのですが、方向が決まらないことには何も言えません。仮に本人の名義に一本化して建てれば一體として評価することができ、そうすると1000m2を超える広大地評価が適用できます。どこをどう分割するかという話はこちらからはなかなか言えませんが、「こういうところがありますよ」「ここだったらできますよ」というご提案はしようと思っています。
それから、だいぶ前になりますが、あまりお金をかけずに相続対策ができた事例があります。その事例では、二世帯住宅を建てるとき、住宅取得資金の贈與を受けるために1階と2階を分筆しました。平成25年に二世帯住宅で小規模宅地の特例が受けられるようになったのですが、分筆していると受けられなかったため、その住宅を共有に戻しました。そうすることで全體の土地が特例を受けることができました。
多様化する土地活用
In:農地を活用するケースも増えてきているようです。農地から住宅地への転用は限られると思いますが、どのようにアドバイスされるのでしょうか。
I:農地から住宅地への転用は、収支が大丈夫そうであれば、どんなところでもやっています。大和ハウス工業がパートナーなら安心感がありますし、大和リビングが借り上げしてくれるということであれば、なおさら心強いですね。將來のことがわかりますし、その間に繰り上げ返済をするためにお金を貯めておけるため、リスクも少なくて済みます。
In:事業系での活用にはどのような事例がありますか。
I:三宮の北側は飲食店街になっているのですが、バブルの頃に店舗貸しが流行りました。ビルの建設から店舗の內裝まで全部オーナーが手掛けますから、身體一つで飲食店ができるビルとなるわけです。私どものお客様で、阪神大震災の後にそういったビルを建てた方がいらっしゃいましたが、金利も稅金も高く、資金繰りで非常にお困りになってご相談にいらっしゃいました。勤務醫の奧様には、將來獨立して開業したいというお気持ちもあったので、このビルを売卻して、奧様の診療施設を別の土地に建てることにしました。土地活用についてはこちらから積極的に提案することもありますが、不動産の譲渡は、判斷が難しく、どうしたらいいのか悩むものです。ですから、そういった経営的なご相談をいただくこともあります。
最近は、土地を介護関係に活用するところもあります。あるお客様の土地でも、サービス付き高齢者向け住宅を建てる話がありました。マンションにしてもいいような場所なのですが、先日大きなビルを売卻したばかりで、稅務上の問題が処理でき次第、動き出す予定です。
In:資産対策研究會のホームページをリニューアルされました。
I:TKCには5~6つの研究會があります。すべての研究會でまとめてホームページをリニューアルすることになり、資産対策研究會のホームページも新しくしました。研究會の中でも醫療系の研究會が提攜先の企業と組んで、顧客を取り入れようと積極的に展開されているので、それにならい、資産対策研究會を対外的に積極的にアピールしていきたいと思っています。これからホームページでもアピールしていくことで、お客様が來てくださるようになってほしいと思っています。