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インタビュー 017
  • 土地活用稅務コラム

稅理士リレーインタビュー 第17回 「稅理士が実際にやってみて、失敗して、実態が分からないと本當の提案はできないと思っています。」 稅理士法人ビジネスソリューションズ 代表社員 高須賀敦様

公開日:2018/11/30

インタビュアー(以下I):松山市で開業されて15年。企業様をメインとして、中小企業オーナー様や資産家などの個人のお客様も対象とされていらっしゃるのでしょうか。

高須賀(以下T):法人稅などの通常の申告などがメインですが、それだけではありません。ここ5年くらいは、ハウスメーカーの中でも特に大和ハウス工業さんとコラボして仕事をさせていただくことが増えています。大和ハウス工業の営業の方と一緒に新しいお客さまのところへ伺い、稅金についてのお話などをさせていただいたり、弊社のお客様をご紹介したりしています。案件が決まれば、稅務に関するお仕事にもつながりますし、いい流れになっています。
また、経営の観點からの事業所の移転などにもかかわらせていただいています。一例ですが、2018年1月に愛媛であった大雨で、お客様のカーディーラーさんも事業施設が水に漬かってしまいました。2カ月くらいである程度事業は再開できたのですが、今回の被害が2度目だということもあり、事業定借による移転を決意されました。
最初は、地元の建築屋さんでというお話だったのですが、大和ハウス工業さんに相談したら、「全國でカーディーラー様の建物を建てています」ということでした。「それならぜひそれをアピールしてください」ということになり、大和ハウス工業さんに土地を見つけていただき、現在その流れで進んでいます。
この事例のように、お客様の悩みに対して適切な提案ができることが大切です。悩みがあっても、うちは誰も知らないからと何もしないでいると、顧問も続かない可能性もあります。松山では、まずまずの規模でやらせていただいていますので、そういうことが提案できる事務所になりたいと思っています。

I:通常の稅務申告のお手伝いに加えて、様々なご相談に乗られて、パートナーとして存在されているわけですね。

松山市では、不動産賃貸はまだまだ効果的な活用法

I:松山市、愛媛県において最近の不動産活用の特徴や変化などはございますか。

T:集合住宅を建てる方法は松山でもまだまだ多いですね。よく、人口が減るから大変だといわれますが、だからといって、不動産賃貸業をされている方がその土地を使って違うかたちで投資や事業ができるかといったら、正直難しいと思います。都會ではいろいろなセミナーがあり、金融資産を使って資産を増やすことも勉強し検討できると思いますが、愛媛ではそういうセミナーも少なく、愛媛の地主さんが安心して資産活用をするとなると、やはり不動産賃貸になるかと思います。

I:オーナー様がとにかく現金を持っておきたいと思われた時でも、「それはお使いになられたほうがいいですよ」といったご提案をされることもありますか。

T:それは、稅理士によって考え方が違うと思います。私たちより下の世代は、あまり現金を信用していないといいますか、今1億円持っているからといって、5年後そのまま1億円の買いものができるかというと、たぶんそうではないような気がします。価値的には7000萬円になっているかもしれません。インフレにはなりづらいかもしれないですが、可能性としては、現金の価値が下がるほうがリスクとしては大きいと私は思っています。
そういう面では、ハウスメーカーとも考え方が合うのではないかと思います。松山でも不動産賃貸業はまだまだ採算が取れます。大儲けはできませんが、ローリスク?ローリターンで安定的です。

I:最近、どこの地方に行っても、高齢化ということで、介護施設や高齢者向け住宅といったものも相當増えているとお聞きします。

T:愛媛県でも多いですね。私は手掛けたことがないので、長期的に見て採算が取れるのかどうかなど、少し不安なところではあります。大手の介護事業者さんが地主さんに建物を建ててもらってそれを借りる、という事業スキームのほうがまだまだ愛媛では多いのですが、その事業者さんが撤退した時のリスクを考えれば、今はいいですが、時代が変わったらどうなるのかなと思うこともあります。

I:先生が手掛けられた事例の中で特徴的な事例などはありますか。

T:今多い相談は、資産家のご主人の相続稅対策をどうするかということです。今は家族信託などもありますが、まだまだ愛媛では家族信託は進んでいません。先日大和ハウス工業さんとやったのは、奧様に相続を全部してもらう前提で、奧様の名義で借り入れして、ご主人の土地の上にアパートを建ててもらう。相続が起こったら、奧様にいったん全部相続していただき、借金とプラスの財産を相殺させてお子様に相続する、といった手法です。ご主人様が意思決定できなくても、配偶者控除を使い、納稅を遅らせ奧さまで相続対策を行うということで、大和ハウス工業さんとそういうスキームで行いました。

I:家族信託は今後増えそうですか。実際に事例として取り組まれているのでしょうか。

T:増えると思います。うちはまだですが、やったほうがいいのではないかという事案はけっこうあります。ただ、金融機関がそこまで追いついていない現狀もあります。委託を受けるお子様が、お父様の財産を入れる通帳を作るにも手間がかかると聞きます。大和ハウス工業さんからも、お父様に更地の土地があって、息子さんが民事信託で委託を受けていて、息子さんの名前で借金して建てる場合、なかなか融資が出づらいということをお聞きしています。

I:ここまで拡大してこられたわけですが、松山の中小企業の方々は厳しい面も多いですか。

T:厳しいですね。今、東京や大阪は景気が良いといいますが、やはり四國は厳しいですね。弊社のお客様でも、大きく成長している方は、広島、岡山など、本州に出ていきたいという人が多いです。先日も、地元松山で製造、組み立てる仕事を取ろうと思ったら、部品が本州から來るので、橋を渡る運賃分競爭に負けてしまうということでした。やっぱりそうなのかと思いましたね。

稅務対策よりも、まず経営をしっかりと

I:稅務対策においても今後は様々な手法へと広がりそうですね。

T:稅務対策というより、やはり事業がうまくいくかどうかが問題です。地元の企業さんなどが、他社からけっこう無理な事業計畫を提案されて、「これでいいですよ」と受けてしまうことがあります。そして、「これ、相続対策より無駄遣いで終わりましたね」で終わることも少なくありません。

I:まず賃貸住宅経営として行うことが重要で、相続稅や資産稅はその後に考えるということでしょうか。

T:稅金は稅金で、當然稅理士として相談は受けるので、そのお話はします。ただし、多くの人が節稅と採算が合わないことを混同していて、お金が減れば節稅だと思っている方もけっこういらっしゃいます。

I:そのあたりは、先生のほうでも事業計畫をチェックして、本當にいいのかどうかをチェックされるわけですね。

T:不動産賃貸業をお客様に提案するなら私自身もやらないといけないと思い、7~8年前から実際に自分でも不動産投資を行っています。賃貸住宅物件としては、中古ですが大和ハウス工業さんの物件を含めて持っています。流通関係では、幹線道路沿いに土地を買いました。今度、大和ハウス工業さんがその上にテナントさんを誘致され、賃借人が建物を建てます。

I:実際に不動産経営をされていれば、地主さんにも自信を持ってお薦めできますし、オーナー様も安心ですね。

T:実際にやってみないと教科書的なことだけしか分からず、ビジネスの段取りもわかりません。固定資産稅や毎年の収入に対する稅金だけなのかと思っていたら、登記の費用もかかったり、事業定借だったらそれにも費用がかかったり、いろいろな知らないことがあります。そういう意味では良い勉強になっていると思います。
稅理士の側も採算が取れるかどうかの感覚がわかっていないと、どのような內容であろうが、営業の方が薦めたものをそのまま受け入れてしまうこともあります。それではだめですからね。
相続稅を下げるために無理な計畫をして、結局のところうまくいかなくて売卻したら売卻損が出る、ということもあります。稅理士が実際にやってみて、失敗して、こういうこともあるのかと分からないと本當の提案はできないと思っています。

事業承継問題で重要なことは、後継者の育成

I:最近は、経営者の方もオーナー様も団塊世代になられて、事業承継を考えているオーナー様が増えているというお話を聞きます。

T:弊社のお客様でもあります。今年の改正で、稅制上はかなり有利になりました。今までは、ある程度の規模のところでは、株を買い取るのに金融機関さんから融資を受けて、後継者なり後継者がやっている會社が買い取るなどと提案してきました。今回の稅制があれば、そういった融資を受けなくても、納稅分も要らずにできそうです。 しかし、一番問題なのは稅制ではなく、今の社長が、事業を続ける次の後継者をどうやって育てるか、あるいは決めるかということであり、そのほうが難しいですね。弊社のお客様でも1社行いました。この稅制が出る前からやっていたので、今回の事業承継稅制を使わずにやりましたが、それまでには、金融機関さんから様々な提案があったり、第3者を後継者にしようとしたり、いろいろありましたが、ようやくめどがつきました。

I:実際、ご子息の方がいらっしゃらないケースが多いのでしょうか。

T:これからは増えると思います。弊社では基本的には親族承継がほとんどですが、今の狀況を聞いていると、親族以外の人に承継させるオーナーが増えると思います。弊社でも第3者に引き継いでもらいたいくらいですからね(笑)。稅理士だけではないと思いますが、子どもだからといって親がやっている事業の才能があるかといえば、そうではないと思います。それなら、一緒にやっている親族以外の方に跡を継いでもらうほうが、成功する確率は高いと思います。

I:今後は、今まで相続稅を払わなくてよかった方々まで対象になるわけですが、そういう意味でも個人の方の相談は増えそうです。

T:それは、金融機関さんからご紹介いただいたりしますしね。しかし、相続というのは、ほぼ爭いになります。弊社が相続を受けている中でも、半分くらいは揉めています。そもそも、稅金計算よりも仲介役として間を取り持つほうが、もしかしたら重要なのではないかと思っているぐらいです。松山は田舎なので、特に長男の相続の割合が多いのですが、その場合、親が財産を長男に多くしたり、遺言にもそのような內容を書いています。そうなると、娘さんたちは納得できないわけです。そこの調整をしながら、納得いくようなところで落としどころを見つけて、あっちにもこっちにも良い顔して、本當に大変です(笑)。

I:そこを解決されるのですから、皆さんすごく感謝されるでしょう。

T:そういう意味ではすごく感謝されますね。それは稅理士じゃないとできないものです。私たちは、家族だからなるべく円満に終わらせましょうというスタンスです。そういう面では私たちにしかできない仕事だと思います。

投資は収益と経費、そして稅金のバランスを考える

I:今後増えそうな投資や不動産活用はありますか。

T:建物だと、オーナー側が常に心配しなければなりません。しかし、土地貸しなら基本的に何もしなくても大丈夫です。そういう面で見ると、今の世代のオーナー様は手間をかけても建物投資を行いたいという気持ちがあるのですが、その次の世代の方は、売るか、手間が掛からないようにしたいというニーズが強いようです。手間がかからないというのは、賃貸住宅経営にいえば一括借り上げです。ただし、一括借り上げでも、例えば修繕ということになると、大和ハウス工業さんから連絡が來て、オーナー様が判斷しないとなりませんから、何もしないわけにはいきません。そしてそれも面倒だとなると、土地を貸して、土地の上に大和ハウス工業に建物を建てていただき、大和ハウス工業さんから貸していただくという形態が増えていくような気がします。

I:そういう意味では、大和ハウス工業はいろいろなスキームを持っていますから、その中で、狀況に合わせて選んでいけばいいですね。

T:土地貸しですと、かなり利回りが出てこないと、経費がありませんので収入があってもかなり稅金がかかります。アパートであれば、減価償卻などがありますが、土地だけだと経費はなく、固定資産稅がそのままかかります。しかも累進課稅ですから、大きく儲ければ儲けるほど、40%や50%の稅金が取られるわけです。家賃収入が少なければ、生活できなくなってしまうこともありうるわけです。それを考えて投資となると、また難しくなります。そういう面では、不動産を活用したビジネスを経験した稅理士であれば経験知がありますから、いろいろな手法に気づき、提案することができます。
今大和ハウス工業さんが建てている流通店舗の件も、土地だけが私の所有で、事業定借で貸していますが、まさしくそういうケースです。収入が入っても経費が少ない分、所得稅、住民稅、固定資産稅が重くのしかかりますから、かなり回らないと稅金倒れになってしまいます。土地は安心ですが、その分稅金が大変です。
ただ、勉強のためと老後のことを考えると、不動産賃貸はやっぱり楽というか安心ですからね。

I:松山ならではのお話をいろいろとありがとうございました。

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