稅理士リレーインタビュー 第15回 「投資は信頼できるパートナーを見つけて、チームで考えていくことが大切です。」 稅理士法人エンカレッジ 代表社員稅理士 遠藤成紀(えんどうせいき)様
公開日:2018/09/28
不動産をはじめさまざまなビジネスをサポート
インタビュアー(以下I):札幌は賃貸住宅投資を始める若い方が多いと聞きます。
遠藤(以下E):私どもの事務所のお客様には、個人土地オーナー様が數多くいらっしゃいますが、ゼロから賃貸住宅投資を始めるオーナー様が増えたのは、ここ10~15年くらいです。比較的若い方が多く、賃貸住宅を10棟、20棟持っている40代の方も結構いらっしゃいます。
I:相続によるものではなく、完全にビジネスとして行われているようですね。
E:最近は、會社経営をしている裕福な方、ある程度富を築いた方の副業的な投資としてのご相談が増えています。そういう方は仮想通貨なども所有しており、不動産だけではなく、いろいろなところに分散投資をします。不動産価格は上がっていますが、それでも一番手堅く安心だという考えもあるようです。
10年ほど前から不動産投資を始めた人が、得た利益を元に、新築物件を建てたり、さらに大きい物件を持ったりなど、ここ數年はそういった流れがあると思います。
また、海外のお金がどんどん入ってきているので、どこまで不動産が値上がっていくのか著地點が見えません。
I:何か特徴のある具體的な相談事例はありますか。
E:稅金をどうしようかという相談で來られる方が多く、相続稅対策で別會社を作って不動産を持ちたいという方もいます。最も簡単な対策でしたら、小さい株式會社を作ってそこで物件を1棟持ち、不動産保有會社にします。不動産を子どもの名義に移すと、當然、贈與稅は大きな金額になります。そこで株を少しずつ譲渡し、必要最低限の稅金の範囲で、子どもの名義に変えていきます。10 ~ 15年計畫で株主を全部子どもにしてしまいます。そうすると、その物件は相続稅の対象から外れることになります。
私どもにご相談にいらっしゃる方はある程度知識をお持ちで、「他の方法はないの?」と相談される方が多いのが特徴かもしれません。ご自身でかなり勉強されています。
また、投資自體のご相談もあります。最初は、小さい物件や中古から始めて、投資をレベルアップしていく中で、もっと大きい物件などを持ちたくなるようです。
I:メインはやはり中小企業様の稅理業務だと思いますが、どのようなことを大切にされていますか。
E:一般の企業様を相手にしていますので、とにかく話をよく聞くことを大切にしています。われわれの業界では、稅理士の資格を持っている人であれば大丈夫だと思いますが、スタッフのレベルになると帳簿チェックだけの人もいます。必ず経営者もしくは経営幹部の方と話をしてくること、話を聞いてくること、そしてこちらから何か一つ提案をすることを意識しています。
I:どのような提案をされているのでしょうか。
E:生命保険、損害保険の提案もあれば、金融機関の提案もあります。
「この銀行のこの金利は高くないですか」ということもありますし、経費項目を見て、家賃や人件費についてお尋ねすることもあります。何か課題を必ず一つ見つけて、お客様のためになるようなことを何でも提案します。
數字に興味がない経営者の方には、経営計畫を一緒に作ることなどを提案します。
昔は、「社長はもっと仕事をしてください」といったこともあります。例えば、職人さんが飲食店を始める場合、どこかのタイミングで経営者にならなければいけない時期がきます。その場合は店員という立場から抜けなければなりません。もしくは、2店舗目、3店舗目を出すと、他の店舗を見なければならなくなります。経営者がいなくなると売り上げが落ちる場合も多く、あまりにも目に余るようなときは、社長に直接お伝えしますし、新店がオープンするときには、必ず初日かその前日のプレオープンに行って、直接社長とお話しします。
I:何十店舗、何百店舗の飲食店を見られているからこそのアドバイスですね。
E:そうです。時にはいい合いをしながら、「でも、俺はこういうポリシーなんだ」という方もいます。それはそれで全然構いません。その場合は、「こんなリスクがありますよ」と、リスクを常に伝えています。経営者は攻めることが好きな方が多いので、私は守る立場に立つことが多くなります。
新規の事業を始めるにしても、飲食店を増やすにしても、「こういうリスクがありますよ」「これだけやると固定費がまた何百萬円増えますよ」というリスクの話を必ずします。「それでもやりたいですか。それでもやれる自信はありますか」と聞いて、「やる」と言われたら全面的に応援します。
不動産投資も同様です。私は、物件を買うといわれて、賛成することはあまりありません。今はかなり利益が出る売りが大半ですから、売ることには賛成します。「今の時點で利益が出ているのであれば、売ってもいいと思います」と提案します。
その後、売ったお金を元手に別のところを買おうとされるわけですが、そこでまたリスクの話をして、「10倍の物件になるのであれば、失敗したら10倍のリスクがあるし、極端な話、これだけの赤字が出る可能性がありますよ」などとお伝えします。
考えておくべき、事業承継問題
I:札幌では、事業承継の問題はいかがですか。
E:私どもの事務所だけだと思いますが、非常に少ないです。お客様は私の年代に近く、これから考えるという経営者の方が多いので、むしろ、 M&Aでもっと他の會社を買いたいという人のほうが多い狀況です。
実は今「事業承継セミナー」というものを事務所で企畫して、お客様に聲をかけていますが、參加者が少なく、うちのお客様は事業承継に興味がないようです。
しかし、40代、50代であろうと、経営者として次のことは考えておかないといけないと思います。自分の5年後、10年後を見據えて、今の法律、稅制はどうなっているのかなど、絶対に勉強しておかなければなりません。40代でも考えておくべきだと思います。
I:地域再生を含めた、不動産活用といったお話についてはいかがでしょうか。
E:現在は、賃貸住宅など、ある程度価格が高騰して良い物件が少なくなっていますので、不動産を利用した次のビジネスを模索している感じでしょうか。民泊もその一つでしょうし、古民家再生もそうでしょう。要は、海外の人にいかに宿泊していただくかです。一昨日に受けたご相談は、空き地にホテルを建てたいという內容でした。皆さん、本當に不動産の活用を考えているのだと思います。
I:大和ハウス工業とはどのように取り組まれていますか。
E:大和ハウス工業さんの先進的な取り組みは、私どものような事務所にとってとても助かります。土地活用で困ったことや、何か良い提案がないか、どう使ったらいいかというご相談がきたら、最初に大和ハウス工業さんに持っていくと、こちらも安心できるし、お客様からも信用されます。
I:地域再生のようなお話も、先生のところではあるのでしょうか。
E:昔はありましたが、不動産を絡めてというのはあまりありません。地元特産の米をどうするとか、農協や漁協さんから話をいただいてということはありました。農業経営アドバイザーと水産業経営アドバイザーという資格がありまして、今、農業経営アドバイザーは失効していますが、北海道でただ一人の水産業経営アドバイザーとして活動しています。
投資には、信頼できるパートナーが必要
I:これから不動産投資を行う方に、気をつけたほうがいい點や、今後活動するにあたって守ったほうがいい點など、アドバイスがありましたらお願いいたします。
E:初めての方には、やはり「信頼する業者さんをしっかり見つけることです」とお話ししています。そして、チームで考えていただきたいと思います。例えば、味方として自分を選んでくれたとしたら、「稅理士以外にも、専門の弁護士さんや司法書士さんが必要ですし、不動産絡みでいうと仲介業者、管理業者が必要です。最初であれば、売り手もなるべくしっかりとしていないと怖いです。もしかしたら問題がある物件を売ろうとしている可能性がないとも限りません。周りの人、仲間とチームを作ってやり始めるのがいいのではないか」とお伝えします。
また、「建てて終わりではない。出口戦略をしっかりと持ってやらないとだめです」とよく言います。
一番のリスク、怖さはやはり人口減でしょう。
投資のニーズや物件はどんどん増えていますが、人口は間違いなく減っています。ですから、どのタイミングで売るのか、どうなると売らなければならないのかということを、きちんと考えて、不動産投資を始めるようにお伝えします。
また、「建てて終わりではない。出口戦略をしっかりと持ってやらないとだめです」とよく言います。
一番のリスク、怖さはやはり人口減でしょう。投資のニーズや物件はどんどん増えていますが、人口は間違いなく減っています。ですから、どのタイミングで売るのか、どうなると売らなければならないのかということをきちんと考えて、不動産投資を始めるようにお伝えします。
I:良い判斷をしていただくために、さまざまな情報を提供されるわけですね。
E:土地活用という點でも、一時は賃貸住宅を建てる、コンビニエンスストアを始めるなど、割と決まったソリューションが多かったと思いますが、今はかなりバリエーションが広がってきた狀況です。大和ハウス工業さんはマーケティングをして、この立地、この人口構成だったらこういうものがいい、そういった提案もされていますのでとても助かります。
さまざまな情報を基に、オーナー様に良い判斷をしていただきたいと思います。
ただ、「もし自分ならこういうことをやる」あるいは「こういうことはやらない」とつい言ってしまいますが、お客様によっては、われわれの言葉は影響力があるようです。「遠藤さんにそんなふうに言われたらできないですね」と言われることもあり、聞き入れていただけるようでありがたい反面、責任もあるので、気をつけて発言しなければと思っています。