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コラム No.92

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30年後の國土を展望~國交省審議會が議論開始~

公開日:2019/11/29

國土交通省の國土審議會は2019年10月30日、有識者會議の「國土の長期展望専門委員會」の初會合を開きました。30年後の國土の姿を展望し、將來の課題を整理して解決への方針を議論する狙いです。人口減少や少子高齢化、頻発する自然災害など國土を取り巻く狀況は変化しており、2050年には國土や暮らしがどのように変化しているかを調査?分析して、今後の國土づくりに役立てようとするものです。

2021年夏メドに議論を集約

國土の長期展望専門委員會の初會合では、國土を取り巻く狀況変化の例として、(1)人口減少?少子高齢化、(2)AI?IoTなどの技術革新、(3)ライフスタイルの多様化、(4)國際環境の変化、(5)自然災害の激甚化――などがテーマに挙がりました。10月30日當日は、(1)と(2)についての議論を始めました。委員會は今後、毎月1回程度會合を開き、20年6月頃に課題を整理する予定で、21年夏をメドに最終的な議論の集約を行う方針です。
國土の長期展望に関する議論に関しては、過去に國土審議會が中間整理を行っています。2011年2月に國土審議會の政策部會長期展望委員會が「國土の長期展望 中間とりまとめ」を発表しており、有識者會議の長期展望委員會は中間とりまとめから10年を経過した2021年に最終報告を取りまとめるものと思われます。中間報告は東日本大震災が発生する直前に公開されたもので、今回の議論は、こうした大規模な自然災害への対応も含めて、わが國に限らず、全世界的な規模で地球環境の変化を考える良い機會にすべきでしょう。ここでは2011年の中間報告を參考に論點を紹介します。

生産年齢人口は30年後に5000萬人割れ?

総務省統計局による人口推計では、2019年10月現在のわが國の人口は1億2614萬人。近年では2008年の1億2808萬人をピークに減少しています。2011年の中間とりまとめでは、日本の総人口は2100年に4771萬人。今後100年間で100年前(明治時代後半)の水準に戻っていくと見られていますが、この変化は日本史上千年単位でみても類を見ない、極めて急激な減少といわれています。
一方、國土交通省の資料によれば、世界全體の人口は2050年まで一貫して増加傾向にあり、2005年の約70億人から2050年には約90億人になると予測されています。人口シェアでみるとアジアが過半を占めますが、その大半はいうまでもなく人口では超大國の中國とインド。東アジア全體では、2040年までに人口は約3億人増加しますが、その後は減少に転じます。中國は1979年から続けてきた「一人っ子政策」を2015年に緩和しましたが、人口は2030年頃をピークに減少すると見込まれています。

日系小売業の進出目立つインドは10年後に人口世界一

これに対しインドは一貫して人口が増加し続けて、2030年には中國を抜いて世界一になると予想されています。このため、日本の小売業では若年層の人口比率が高く、消費の拡大が見込まれるインドへの進出が目立ちます。今年はカジュアル衣料の最大手ユニクロがムンバイに1號店を出店、コンビニ最大手のセブンイレブンも2020年早々の出店を予定しています。
生産年齢人口の割合をみると、日本は既に1990年をピークに減少していますが、インドでは2040年まで生産年齢人口の割合が増加すると見込まれています。アジア地區に多くの工場を置くわが國の製造業で、労賃が高騰している中國からインドへの生産拠點シフトの傾向が強まりそうです。

図1:東アジア各國の人口推移

國土審議會政策部會長期展望委員會「國土の長期展望」(2011年)中間とりまとめ

家族類型の変化は住宅供給に波及

人口の減少とともに今後大きな変化があるのが、家族の類型です。今回の委員會でも、國土を取り巻く狀況の変化要因のひとつとして、「ライフスタイルの多様化」が挙げられています。一家で夫婦が親を養い、子どもを育て、子どもが成人し就職して別の家庭を築いて世代を継承していく、という伝統的な家族構成、家族観が年々希薄化しています。

図2:世帯類型別世帯數の推移

國土審議會政策部會長期展望委員會「國土の長期展望」(2011年)中間とりまとめ

「中間とりまとめ」によると、世帯類型はこれまで、家族類型の主流だった「夫婦と子」からなる世帯は2050年には約745萬世帯。全體に占める割合は約2割と少數派になり、代わって単獨世帯が約1786萬世帯で全體に占める割合は約4割と一番多い世帯類型になります。また単獨世帯のうち高齢者単獨世帯の割合は5割を超え、2050年まで増加し続けると予測されています。

30年後は獨身者が42%、夫婦2人世帯が18%、子どもがいる夫婦は28%で、その3分の1強が一人っ子家庭と予測されています。こうなると、住宅供給の分野でも大きく変化すると思われます。獨身者は広い家に住まず、結婚しても2割の確率で子どもがおらず、子どもがいるとしても3世帯につき1世帯の割合で一人っ子だとすれば、延床面積の広い住宅は需要が低下するでしょう。
今後は、広い面積の住居よりも、よりコンパクトな居住空間に大きなニーズが発生することは間違いなく、これを住宅ストックの観點から考えると、変化する住宅ニーズに対して、既存の住宅ストックをどのように効果的に活用するかといった方策を検討し、確実に実施していく必要がありそうです。

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