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コラム No.71-3

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「特例事業承継稅制」シリーズ(3)雇用確保要件の緩和と事業継続要件

公開日:2019/03/29

特例事業承継稅制では、雇用確保要件80%の雇用を確保できなかった場合でも認定は取り消されず、會社に認定経営革新等支援機関の意見が記載された報告を求めるなどの対応がされることになりました(実質的に撤廃)。

雇用確保要件の緩和

贈與または相続等をして事業承継稅制の適用を受けると、贈與稅の申告期間または相続稅の申告期限から5年間の事業継続期間の間、一定の要件を満たさないと納稅猶予が取り消され、猶予稅額を納稅しなければなりません。その要件の一つに「常時使用する従業員數が5年平均で贈與または相続當時の80%を下回らないこと」とする雇用確保要件があります。
平成30年度稅制改正による事業承継稅制の特例措置では、この雇用確保要件を満たさない場合でも、認定経営革新等支援機関の意見が記載されている「雇用確保要件を満たせない理由を記載した書類」を都道府県庁に提出すれば納稅猶予は取り消されないことになりました。また、その理由が経営狀況の悪化である場合または正當なものと認められない場合には、特定認定承継會社は認定経営革新等支援機関から指導および助言を受けて、當該書類にその內容を記載すればよいことになりました。
これまで、事業承継稅制の適用が敬遠されていた大きな理由の一つに、リーマンショックのようなことが起きた際に雇用が維持できなくなることへの恐れがありました。特例事業承継稅制では、この雇用確保要件が実質的に撤廃されることによって、雇用に縛られることがなくなり、事業承継稅制適用のハードルが下がったといえるでしょう。なお、一般事業承継稅制では雇用確保要件が従來通りありますので注意が必要です。

  • 參考
    常時使用する従業員數の判定は、以下の通知書等に記載された被保険者等の數で行います。
  • (1)厚生年金保険の標準月額報酬額決定通知書(70歳未満)
  • (2)健康保険の標準報酬月額決定通知書(70歳以上75歳未満)

ただし、雇用確保要件が実質的に撤廃されたとはいえ、適用開始から5年間は次項のような事業継続要件があります。よほどのことがない限り、これらに該當して認定を取り消されることはないと思われますが、留意しておかなければなりません。

5年間の事業継続期間に認定取り消しとなるケース

雇用確保要件が実質的に撤廃されたとはいえ、適用開始から5年間は次項のような事業継続要件があります。よほどのことがない限り、これらに該當して認定を取り消されることはないと思われますが、留意しておかなければなりません。

  • (1)報告?屆出を怠ったとき(毎年1回、都道府県への報告、所轄稅務署長への屆出が必要)
  • (2) 代表者でなくなったとき(不慮の事故で代表者を務められなくなった場合〈身體障害者手帳の交付を受けた場合など〉は代表者退任でも「免除対象贈與」を行えば継続できる)。ただし、代表者でなくなったときでも次の場合は認定継続できます。
精神障害者福祉手帳 1級に限る
身體障がい者手帳 1級または2級
要介護認定 要介護5の認定
  • (3)常時使用する従業員の數が8割を下回ったとき(年1回報告時の現況で判定)※特例事業承継稅制の場合は、この雇用確保要件は実質的に撤廃
  • (4)會社が倒産、解散したとき
  • (5)納稅猶予適用対象株式を譲渡?贈與したとき(継続保有は保有している株式のうち納稅猶予適用分のみ)
  • (6)持株比率要件(後継者と同族関係者で総株主等議決権の50%超を保有し、かつ同族関係社の中に保有株式數の上位者がいないこと)を満たさなくなったとき
  • (7)適用対象外會社(上場會社および風俗営業會社)に該當したとき(非上場のまま中小企業でなくなった場合は認定継続)
  • (8)資産保有會社または資産運用型會社になったとき(5年経過後についてもこれらに該當すると納稅猶予打ち切り)
  • (9)減資を行った場合(欠損填補目的および全額を準備金とする場合を除く。資本準備金及び利益準備金の取り崩しについても同様)
  • (10)組織変更(株式會社から合名會社への変更等)の際に株式以外の財産交付があったとき
  • (11)総収入金額がゼロになった場合
  • (12)先代経営者が代表者に復帰したとき(贈與の場合)

事業を引き継ぐ経営者の立場になれば、雇用の維持は企業経営にとって非常に難しい課題の一つです。今回の改正で、特例事業承継稅制を適用を受けるために毎年1回の都道府県への報告、所轄稅務署長への屆出さえ実施していれば、雇用の維持が義務ではなくなりましたので、非常に活用しやすくなりました。

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