CREコラム?トレンド
國が後押しするBIM/CIMとは?
公開日:2022/03/31
國が積極的に普及を後押するBIM/CIMへの関心が建築業界で高まっています。実際に建物を建設する前の段階でコンピュータ上に立體モデルを作成し、建築に関連する多様なコストなどを最適化する手法で、生産性を向上させ建設業に関わる人たちの働き方を改善するなど業界成長のカギを握るものとして注目を集めています。
2014年に國がBIMガイドラインを策定
BIMは「Building Information Modelling」の略。ITを活用して建築における計畫?調査?設計?施工?管理の全ての段階で3次元モデルを組み立て、情報を共有しながら工程を進めていくツールといわれています。モデリングとはシステム開発の分野で、業務フローやその構造を抽象化することです。システム開発においては多くのソフトウエアを駆使しますが、完成に至るまでの過程では不要な情報も出てきます。それらを削ぎ落として開発の本丸に到達するために本質的な部分にスポットを當てて情報を的確に伝えていくことが求められます。
しかし要求されたシステムを構築した後に、間違っていたから作り直すというのでは非効率。こうした弊害を除いて効率よく適切な予算で成果物を得る手法がBIMといえるでしょう。とりわけ建築物はやり直しが効きませんから、建築業界におけるBIMは注目すべきツールといえるでしょう。
BIMはアメリカで生まれた考え方で歐米を中心に普及が進んでおり、わが國では2010年頃に國土交通省が提唱してきました。2014年3月に國土交通省が「BIMガイドライン」を策定し、官公庁の営繕事業に適用するようになりました。國が率先して公共建築物の設計?工事にBIMを導入することで、啓蒙と普及を図る狙いがありました。CIMは「Construction Information Modelling」の略で、Building(建築)がConstruction(土木)に置き換えられたもので、現在ではほぼ同一視されています。
BIMCIMはメリットが多い
BIM/CIMモデルは対象の構造物の形狀を3次元で表した立體的な情報である「3次元モデル」と、3次元モデルに付與する部材の名稱や形狀、寸法、強度、數量などの「屬性情報」を組み合わせたものです。BIM/CIMのメリットは、
- (1)生産性の向上
- (2)合意形成?情報共有の効果
- (3)建設現場の改革、働き方改革
- (4)新産業の創出
図1:BIM/CIMがもたらす明るい未來
出典:國土交通省「初めてのBIM/CIM」
などが挙げられます。設計段階では、建設予定地の周辺住民に対する説明會などで立體的な3次元モデルを使うことで、より深く理解してもらうことが期待されています。紙の設計図や見取り図など2次元の資料を使った説明では、一般の人々は完成後の建築物に対するイメージは湧きにくいものです。3次元モデルならば、より多くのの地域住民の理解が得られやすいといえるでしょう。
また施工段階で施工手順や工事の進捗狀況が可視化され、資材や機材の調達も最適化されます。建設現場では従來の2次元畫面を使った発注や契約、検査などの過程を見直すことも可能で、品質向上や生産性向上が実現します。作業の効率化で工事日數が短縮され休日が拡大。技能や経験にふさわしい処遇の改善も進むといわれてます。
BIM/CIMの導入を阻むものとは?
ただ、國內の建築業界ではBIM/CIMの導入は必ずしも順調に進んでいるわけではありません。BIMを積極的に導入している歐米では、公共?民間を問わず建築申請の要件としてBIMデータを付けることが義務化されていますが、わが國では前述したように官公庁の営繕事業に対してガイドラインがあるだけで、義務化されていません。BIMを導入するためには高額なソフトウエアや高性能のハードウエアが必要です。またCADなどの技術と異なり、BIMを取得した人材がそもそも少ない現狀があります。
図2:BIMの導入に至らない理由
建築分野におけるBIMの活用?普及狀況の実態調査確定値<詳細>(令和3年1月國土交通省調べ)より作成
こうした背景がBIM/CIMMの導入を遅らせている原因といわれています。國交省が2021年に公表した「建築分野におけるBIMの活用?普及狀況の実態調査」によると、設計?施工の関係者は「発注者からBIMの活用を求められていない」との理由で、BIMを導入していないと答えた人が多く、「現狀はCADなどを使うことで何も問題はない」との認識にあります。
しかし、わが國の産業界はどの業種も少子高齢化による擔い手不足が深刻です。特に建築業界はいわゆる「3K」のイメージが強い業界。建築業界で進んでいるDX(デジタル?トランスフォーメーション)は、この人材不足を改善する手立てのひとつとして注目されており、BIM/CIMもDX推進の流れに沿うものとして位置づけられます。コスト面における導入のハードルは必ずしも低くはありませんが、人材不足や資材の高騰といった建設業界が抱える構造的な課題の解決ツールとして一層の普及が待たれます。