CREコラム?トレンド
長期化する「ウッドショック」
公開日:2021/08/31
北米などから輸入される木材の価格高騰が続いています。アメリカでコロナ禍による新築住宅需要が高まり北米産の木材価格が急上昇。輸入製材に頼る日本國內(nèi)の家具製造や住宅建設(shè)などの業(yè)界にその影響が及んでおり、関係業(yè)界では「ウッドショック」と呼んで対応に苦慮しています。
コロナ禍でアメリカ住宅建築需要が反転
新型コロナウイルスの感染者數(shù)が世界最多のアメリカでは、2020年5月にロックダウンが解除されて以降、住宅建築ニーズが急増。2021年に入ってからも住宅建築の許可數(shù)は高い水準(zhǔn)を維持しています。
図1:アメリカ 住宅建築許可件數(shù)
出典:経済産業(yè)省?経済解析室ひと言解説集「新型コロナがもたらす供給制約;ウッドショックの影響」
アメリカではわが國同様、テレワークによる自宅勤務(wù)者が増加したことで郊外に住居を求めて新築物件を購入したり、自宅をリフォームしたりする傾向が顕著になりました。アメリカ政府が低金利政策を取っていることも相まって住宅ローンの需要も旺盛になっています。一方で、コロナによる製材所の休業(yè)が増えて建築用木材の供給が需要に追い付かず、木材の高騰を引き起こしたといわれています。アメリカ國內(nèi)で需要が高まれば、他の諸國に輸出される木材は足りなくなり単価は上昇、コロナ禍によるコンテナ輸送業(yè)務(wù)の停滯?遅延で海上運(yùn)賃も値上がりするなど、輸入木材の品薄と価格高騰はますます拍車がかかっています。
製材価格は輸入品が國內(nèi)産を逆転
製材価格は、新型コロナウイルスが世界的に蔓延し始めた2020年5月頃に一時(shí)停滯気味になりましたが、同年8月以降に上がり始め、2021年に入って輸入価格が國內(nèi)価格を上回るようになりました。住宅建設(shè)市場が大きいアメリカで木材ニーズがひっ迫したため、2021年夏以降、丸太や製材の価格が國際的に上昇しており、ウッドショックは世界的な現(xiàn)象であることがうかがえます。
図2:製剤価格の推移
出典:経済産業(yè)省?経済解析室ひと言解説集「新型コロナがもたらす供給制約;ウッドショックの影響」
わが國の木造住宅では、強(qiáng)度が安定し加工しやすい北米産の松(ベイマツ)が最もよく使われています。
農(nóng)林水産省資料「木材流通統(tǒng)計(jì)調(diào)査 木材価格(令和3年7月)」によると、「米まつ平角」の価格は2020年7月と2021年7月を比較すると約6割上昇しています。建物価格を値上げする業(yè)者も出てきていますが、価格高騰が売買契約前の物件に関しては価格転嫁することができず、業(yè)者負(fù)擔(dān)になっているケースもあるようです。
家具製造?販売の世界でも、輸入木材の品薄、値上がりに頭を抱えています。世界の三大銘木といわれるのが、「ウォールナット」「マホガニー」「チーク」。ウォールナットはクルミの木。カナダの一部の州やアメリカ東部などを産地としており、濃茶色で木目が美しく、テーブルなどに用いられます。マホガニーは中南米が産地で國際的に保護(hù)されている希少価値木材。チークもマホガニーと並ぶ高級木材で、インドネシアやミャンマーが輸入元といわれています。こうした輸入木材を使うことが多い日本の高級家具メーカーや販売店では、仕入れ価格の上昇を受けて2021年7月から値上げをしているところが増えています。
木材高騰が新築住宅販売に影?
ベイマツを中心に輸入製材を多く使うわが國の住宅建設(shè)業(yè)界。仕入れ価格の急騰を受けたのでしょうか、2020年8月から新築住宅販売戸數(shù)は逆の動(dòng)きを見せ、急激に下降しています。下の「新築戸建住宅売買業(yè)指數(shù)の推移」を見ると、不動(dòng)産業(yè)では橫ばいで推移していますが、売買業(yè)つまり販売業(yè)の世界では急降下を示しています。アメリカ同様、コロナ禍で新築物件の売れ行きが好調(diào)だった住宅販売がウッドショックという冷や水を浴びた格好になっています。住宅建築で使用する木材の7割を輸入材が占めるといわれているわが國の住宅建築事情。今回のウッドショックを契機(jī)に國産材へのウェイトシフトを図るべきではないかとの聲も聞かれます。
図3:新築戸建住宅販売業(yè)指數(shù)の推移
出典:経済産業(yè)省?経済解析室ひと言解説集「新型コロナがもたらす供給制約;ウッドショックの影響」
わが國は、國土面積の約7割を森林が占める森林大國です。國土に占める森林の比率(森林率)は、2020年の世界森林資源調(diào)査(FRA)2020メインレポート「OECD加盟國森林率上位10か國,2020年」によると日本は北歐のフィンランド、スウエーデンに次いで3位です。
日本の森林は約5割が天然林で、約4割が木材生産のための人工林、殘りの約1割が竹林などとなっています。わが國の人工林はスギやヒノキ、カラマツなど比較的成長が早く、建築用資材に適している針葉樹林が大半です。人工林の多くは今、造林から30年~50年を経過して収穫期を迎えていていますが、これまで森林を守ってきた人たちの集落が過疎化したり高齢化が進(jìn)んだりした結(jié)果、林業(yè)経営の後継者が不足しています。また所有者不明の森林も多く、伐採しようにも著手できない狀態(tài)が長く続いてきました。
また、スギの価格は、國內(nèi)の林業(yè)メーカー側(cè)からすれば、現(xiàn)在でも高いとはいえず、市場価格が維持できないことから、國內(nèi)の林業(yè)メーカーが早期に増産體制を取ることは困難だといわれています。國産材への切り替えを聲高に叫んでも、すぐには移行できない狀況にあるのです。今回のウッドショックは一時(shí)的な現(xiàn)象とみる向きもありますが、輸入依存度が高いわが國の産業(yè)構(gòu)造の脆弱性を浮き彫りにしました。サプライチェーンの再構(gòu)築が求められます。