CREコラム?トレンド
注目集めるサブスク住宅
公開日:2021/02/26
一定額の料金を支払って商品やサービスの提供を受けるサブスクリプションが各方面で増えています。數年前からは住宅分野にも登場しており、サブスク住宅と呼ばれています。コロナ禍で居住ニーズが大きく変化するなか、今後注目を集めそうです。
シェアハウスと似ている面も
サブスクリプション(Subscription)は、商品やサービスに対して購入金額を支払うのではなく、利用度合いに応じて定期的に利用料金を支払う方式のこと。定額制とも訳され、サブスクと略して使うことが多くなってきました。
サブスクの導入が最も早かったのがIT業界。PDFなどのソフトウエアを販売している企業は、それまでCD-ROMなどのメディア(記録媒體)に入れて販売していたものを2013年からインターネットからダウンロードして使う方式に転換し、成功を収めたといわれています。業務用の定番ソフトも、現在ではオンラインによる定額制が増加しており、バージョンアップごとに購入する手間が省けました。いわゆるクラウドサービスがコンピュータの世界で當たり前になり、音楽もダウンロード配信が主流になり課金制が登場するなど、サブスクはインターネットの進化がもたらした事業モデルといえるでしょう。
アパレルや飲料のサブスクも登場
サブスクビジネスは、いまや多岐にわたっています。アパレルでは定額制の衣裝レンタルが始まっています。大手ビール會社は家庭用サーバーを貸し出して工場直送の生ビールを定額制で開始したところ申し込みが殺到。一旦停止したのちに再開しました。自動車最大手も月額制のレンタルサービスを始めています。そのほか眼鏡やコンタクトレンズ、飲食チェーンも定額制を導入して「毎月2萬円で飲み食べ放題」などのサービスを取り扱って顧客の先取りをしています。
定額制サービスの住宅版がサブスク住宅です。この數年に出現した形態ですが、シェアハウスと似ている面もあります。サブスク住宅はいくつかのパターンがありますが、利用者と共同賃貸契約を結ぶことは共通しているようです。そのメリットは利用したい分だけ借りられることや、敷金?禮金の初期費用がかからないこと、家具や家電があらかじめ設置されていることがメリットとして挙げられます。ただし、キッチンやトイレ、風呂などの水回りは共同で使います。
會社によって異なりますが、あるA社の場合、利用期間は最低3か月の短期間でも契約可能で、二親等(両親?夫婦?子息?兄弟姉妹など)やパートナー1人まで追加費用なしで同居できます。全國に120か所以上(2021年1月現在)の空き家になっている民家や別荘の部屋を間借りします。
別のB社は主に都心部に物件を多く構えており、社宅や寮などの転用もできるようになっています。
所有から利用、生活様式の変化に対応
シェアハウスと異なるのは、利用日數を比較的自由に設定できることと、契約先が複數の拠點を持っていれば、その範囲內で転居して利用できる點でしょう。會員制を採用しているところが多く、1か所に定住するというこれまでの住居形態にはないスタイルになっています。
サブスク住宅が受け入れられる背景には、主に若い世代の間で多くの物品やサービスを「所有すること」から「利用すること」に移行している生活様式の変化が挙げられます。昨年から続くコロナ禍で、働く人のライフスタイルは大きく様変わりしています。都心部への通勤から解放されてテレワーク中心のライフスタイルを送る人が増えており、コロナが終息したあともテレワークを継続する企業も増加するとみられています。
その場合、企業がサブスク住宅を借り上げることも予想されます。サブスク住宅を企業活動の拠點にしてIT大手が提供する業務クラウドシステムを導入すれば、リモートによる業務を展開することが中小規模の企業でも可能になります。製造業や小売業ではこうしたビジネス展開は難しいですが、Web関連のIT企業ならば支店や事業所を持つことなく全國展開できます。
一方、コロナ禍により、通勤途上の地域に業務の拠點を構えるサテライトオフィスを導入する企業も出ています。サテライトオフィスで使用する機や椅子などの事務用品を取り揃える際に利用する「サブスク家具」も登場しています。購入またはリース?レンタルに比べて料金が低減できるメリットがあるようです。コロナが終息するまでの臨時拠點ならば、こうしたケースが増えるかもしれません。サテライトオフィスに限らず、自宅でテレワークをする人のために、パソコン作業に適合した機や椅子のサブスク版もあります。
コロナ禍を機に人々の暮らしと働き方は大きく変わりました。しかし、終息後も継続する企業もあれば、以前の様式に戻る會社もあるかもしれません。現時點でそれを明確に推し測ることは極めて困難です。サブスクリプションをうまく活用してコロナ禍での暮らしや仕事を乗り切り、その後どのようなワークスタイルにするのかを模索していくことが必要なのかもしれません。