2020年10月から建設(shè)業(yè)法の一部改正が施行されました。建設(shè)現(xiàn)場における長時(shí)間労働をなくす狙いから、著しく短い工期を禁止するなど働き方改革の要素を取り入れました。法改正は建設(shè)業(yè)における擔(dān)い手育成を軸に行われたもので、労働環(huán)境の整備を進(jìn)めて建設(shè)業(yè)に新たな労働力を注入することに力點(diǎn)が置かれています。

新?擔(dān)い手3法の成立

今回の建設(shè)業(yè)法改正は、関連する他の2つの法律の改正と共に一體的に見直されたものです。人口減少や少子高齢化により労働者人口が年々減っており、あらゆる業(yè)界で働き手の不足を解消することが喫緊の課題になっています。とりわけ建設(shè)業(yè)は災(zāi)害から國土を守り、暮らしの拠點(diǎn)を支える擔(dān)い手として、その重要な役割は変わることがありません。それどころか、近年は1年を通じて豪雨や土砂崩れによる河川や砂防の決壊などの自然災(zāi)害が人々の生活を脅かしており、國土強(qiáng)靭化に向けて建設(shè)労働者が擔(dān)う役割は年々増しています。

建設(shè)業(yè)は、大工や左官など特殊技能を身に付けた職人の現(xiàn)場力が不可欠です。熟練者に育つには長年の経験が必要で、技術(shù)の継承も大事な世界です。しかし休日も少なく給與なども他産業(yè)に比べて低いため必ずしも魅力のある業(yè)界になっておらず、若年層の人材が不足しています。一方、近年は各地で自然災(zāi)害が多発。家屋や河川の復(fù)舊工事に攜わる専門技術(shù)者の數(shù)が不足しているために、災(zāi)害からの復(fù)興が遅れている現(xiàn)実があります。

こうした狀況を改善するため、國は2014年に建設(shè)業(yè)界の新たな擔(dān)い手を確保する目的で、関連する3つの法律を一體的に改正しました。公共工事品質(zhì)確保法（品確法）、入札契約適正化法（入契法）、そして建築業(yè)法です。これを「擔(dān)い手3法」と呼びました。そして同法の施行後5年に新たな枠組みをつくりました。それが「新?擔(dān)い手3法」で、今回の建設(shè)業(yè)法改正はこの中に含まれています。

図1：（年齢階層）年齢階層別の建設(shè)技能労働者數(shù)

國土交通省「新?擔(dān)い手3法の成立など最近の建設(shè)業(yè)を巡る狀況について」（2020年8月）より作成

労働環(huán)境の改善が急務(wù)

國土交通省は、建設(shè)業(yè)界の労働者で25％を占めている60歳以上の高齢者（82.9萬人）は、10年後には大量に離職すると見込んでいます。一方、これを補(bǔ)う30歳未満の若い人材は36.5萬人と11％のシェアで、このまま推移すれば確実に人材不足に陥ります。建設(shè)業(yè)に攜わる技能者の賃金は、45歳から49歳でピークを迎えるとの結(jié)果が出ていますが、國交省は「體力のピークが賃金上昇のピークと重なっている側(cè)面があり、技能者のマネジメント力などが十分に評価されていない」と指摘しています。また、他の産業(yè)では既に定著している週休2日が取れていないのが実情です。年間の実労働時(shí)間も全産業(yè)の平均（2018年度1697時(shí)間）と比べて300時(shí)間以上長く（2036時(shí)間）なっています。

図2：建設(shè)業(yè)における休日の狀況（技術(shù)者）

國土交通省「新?擔(dān)い手3法の成立など最近の建設(shè)業(yè)を巡る狀況について」（2020年8月）より作成

わが國の中小企業(yè)で最も會社數(shù)が多い業(yè)種が建設(shè)業(yè)界。元請けから協(xié)力會社、いわゆる下請け會社まで重層的に繋がっており、業(yè)界特有の構(gòu)造になっています。2018年の調(diào)査で社會保険の加入率を見ると、雇用保険?健康保険?厚生年金の「3保険」の加入率は、元請け企業(yè)が98.4％であるのに対し、1次下請けは97.2％、2次下請けが94.3％、3次下請けが90.5％と下位になればなるほど加入率が低くなっています。

短い工期の禁止や親子での事業(yè)承継など盛り込む

建設(shè)業(yè)法改正では、発注者（元請け人）と受注者（下請け人）における「法令順守のガイドライン」を改定しました。例えば、建設(shè)工事の発注者は建設(shè)工事契約において「著しく短い工期」を結(jié)んではならないことになりました。工期を短くすればその分完成は早まりますが、手抜き工事や事故の発生に繋がりかねませんし、1日の労働時(shí)間が長時(shí)間化することが避けられません。

また、建設(shè)工事における休業(yè)日を請負(fù)契約內(nèi)容に盛り込むことになりました。建設(shè)労働者の休日確保が狙いで、下請會社の労働者に対する就業(yè)環(huán)境の改善を図ることで、今後新たな労働力を生み出す狙いがあります。

建設(shè)工事における請負(fù)代金のうち労務(wù)費(fèi)は、元請けは下請けに対して現(xiàn)金で支払うよう配慮することとなりました。これは社會保険料の加入と関係があります。労務(wù)費(fèi)は建設(shè)工事に従事する者の賃金や社會保険料に充てられるべきものです。これが手形で支払われた場合、下請會社は金融機(jī)関から現(xiàn)金を別途調(diào)達(dá)することになり、余分な借り入れコストが生じます。下請會社の保護(hù)の強(qiáng)化を図る狙いです。

社會保険の加入に関しては、建設(shè)業(yè)許可の取得において要件化されることになりました。既に業(yè)務(wù)許可を得ている業(yè)者も、5年に一度の更新時(shí)には加入していない場合に許可を失うことになります。

建設(shè)業(yè)は國內(nèi)で最も企業(yè)數(shù)が多い業(yè)界だけに、高齢化社會の進(jìn)展による後継者問題は、どの業(yè)種にもまして深刻です。従來の建設(shè)業(yè)法では建設(shè)業(yè)の新規(guī)申請は企業(yè)合併などの場合を除いて、原則認(rèn)められていませんでした。また申請しても長い場合は4か月ほどを要することがあり、許可の空白期間がありました。これを改め、新たに承継制度を設(shè)けました。これにより、空白期間が生じることがなくなりました。加えて親子に限って相続が認(rèn)められ、事業(yè)承継が可能になりました。

近年は全國各地で災(zāi)害が多発しており、建設(shè)現(xiàn)場に従事する働き手の不足は地域振興の遅れに直結(jié)します。こうした擔(dān)い手に対する「働き方改革」は、地方創(chuàng)生、地域再生にも不可欠な取り組みといえるのではないでしょうか。