古今東西の建築を吟味し、また自らつくり続けてきた経験から、縦橫無(wú)盡に建築を語(yǔ)る藤森さん。「建築と自然の融和」が長(zhǎng)年のテーマだ。

―― 建築の世界で、サステナビリティに似た概念を持つムーブメントや考え方は、以前からあったのでしょうか。

藤森 :1960年代に菊竹清訓(xùn)さん、黒川紀(jì)章さん、槇文彥さん、大高正人さんといった錚々たる建築家たちが「メタボリズム」という運(yùn)動(dòng)を起こしました。

メタボリズムとは、建築を「新陳代謝させていこう」「木や植物のようにだんだん成長(zhǎng)できるようにしよう」という考えです。今で言うところのサステナビリティに近いでしょう。そしてその思想を見(jiàn)事に造形化してみせたのが、黒川さんが設(shè)計(jì)した〈中銀カプセルタワー〉でした。

ただし、やはりここで建築の高耐久性?長(zhǎng)壽命化を?qū)g現(xiàn)させる難しさに直面します。黒川さんは、「住居ユニットのカプセルを付け替えていけばいい」と主張したのですが、建物は傷む場(chǎng)所の順?lè)涠群悉い饯欷兢爝`う。

例えば、意外とすぐに傷んだのは、給排水の配管でした。配管は構(gòu)造體の中に入れられていたため、取り替えようとすると、カプセル全體を外さないといけない。配管を構(gòu)造體の外に出して、耐久性のある部分とそうでない部分を分けておけばよかったのかもしれません。

黒川紀(jì)章氏の初期の代表作「中銀カプセルタワー」。カプセルを積み上げた形の集合住宅で1972年竣工。

―― その後、「取り替え」の考えは取り入れられていったのですか?

藤森 : そうですね。大量の住宅のメンテナンスをする中で、短い期間で取り替えなくてはいけないところと、長(zhǎng)い間使えるところとが明確になってきました。骨組みは最も長(zhǎng)くもつのですが、水廻りの設(shè)備、特に配管には問(wèn)題が起こりやすい。その反面、空調(diào)機(jī)器は性能が年々進(jìn)化しており、コンパクトで消費(fèi)電力も少なくなってきています。その點(diǎn)では、長(zhǎng)壽命化という、建築におけるサステナビリティは、徐々に実現(xiàn)しやすくなっているのかもしれません。

―― 骨組などずっと使い続けるものはしっかりとつくり、問(wèn)題が起こりやすい箇所や、技術(shù)進(jìn)歩の速い設(shè)備部分はメンテナンスしやすい設(shè)計(jì)にすることで、長(zhǎng)壽命化という時(shí)代のニーズに応えていくことができそうですね。

藤森 : そうです。徐々に部品を替えて使い続けることを想定したクルマや電化製品というのは出てきたことがありませんよね。建築では、交換することをあらかじめ考えておくことができますし、それにより長(zhǎng)壽命化を?qū)g現(xiàn)できる。そうすることで解體による環(huán)境負(fù)荷が抑えられるわけですから、建築は環(huán)境のサステナビリティに最も貢獻(xiàn)できる分野かもしれません。

世界最古の木造建築「法隆寺」、日本最古の茶室「待庵」――あの日本建築が長(zhǎng)持ちする理由

―― たくさんの資材を使う建築において、資源の循環(huán)性という観點(diǎn)も重要です。建材のリサイクルの現(xiàn)狀はいかがでしょうか。

藤森 : 建物に使われる材料の中で、リサイクルされているものとしては、紙と鉄などがあります。紙はリサイクルのシステムが確立していて、最近では奪い合いになっているくらい。鉄も有史以來(lái)、リサイクルされてきました。鉄筋コンクリートの塊を解體現(xiàn)場(chǎng)で潰しているのは、運(yùn)びやすくするのに加えて、中に入っている鉄筋を取り出すためです。一方で、コンクリートやプラスチックなど、たくさんの廃棄物をどうするかは、今後の大きな課題です。

―― 日本の伝統(tǒng)的な建材である木材は、資源の循環(huán)性という観點(diǎn)からはどのように評(píng)価できますか。

藤森 : 木は伐採(cǎi)してもまた生えてくるので、木材は循環(huán)性に優(yōu)れている材料と言えるのではないでしょうか。ただ、木がこれほど身近なのは日本だけ。日本は巖盤が少なく、地震の褶曲(しゅうきょく)※を受けて土壌が緩み、雨が年間を通してよく降るので、木が自然と生えてきます。

巖盤が多い地域では、そうはいきません。ロンドンでは大火の後に建物をすべて煉瓦造りにしましたが、煉瓦の生産で都市周辺の木を伐採(cǎi)し盡くして燃やしたために、森林が荒廃してしまった歴史があります。

※ 地層などが大きな力によって、波を打ったような形狀に変形すること

―― そういった背景から、木造建築は日本らしいスタイルなんですね。建築の長(zhǎng)壽命化を考えるとき、日本で長(zhǎng)い間建っている木造建築も參考になりそうです。

藤森 : 木造建築として世界最古の法隆寺があるように、メンテナンスし続けて、長(zhǎng)く使うという意味ではサステナブルでしょう。ただ、法隆寺は特殊ですから、現(xiàn)代の持続可能性とは単純に比較できません。

―― どのような點(diǎn)が特殊だったのでしょう。

藤森 : 法隆寺は、まさに法隆寺のためだけに技術(shù)も材料も結(jié)集してつくられた一點(diǎn)物。例えば、柱を切り出す際、通常であれば一本の木から一つの柱を得ます。その場(chǎng)合、強(qiáng)度の低い芯を含まざるを得ません。

一方、法隆寺では太い木から芯を避けて、4本の柱が取られるという贅沢な使い方がされました。樹(shù)齢を重ねた太い木だからできたことです。だから柱が強(qiáng)固なんです。建立當(dāng)時(shí)の飛鳥(niǎo)時(shí)代には、まだ周辺に良質(zhì)なヒノキの大木が豊富にあったのでしょう。

ちなみに、縄文時(shí)代では、クリのような広葉樹(shù)しか使っていなかったのですよ。石の斧では、針葉樹(shù)のスギやヒノキは切れないからです。ヒノキなど建物に使いやすい針葉樹(shù)が伐採(cǎi)できるようになったのは、彌生時(shí)代に鉄が扱えるようになってからでした。

中世以降は、木材を流通させて使うマーケットができて、現(xiàn)代にも通じる木材の寸法體系が定まっていきました。
木造建築を語(yǔ)るときには、こうした歴史的背景も念頭に置かなければなりません。

上質(zhì)な大木が豊富にあった時(shí)代ゆえの、ぜいたくな柱の取り方を描いてみせる藤森さん。

日本が世界に誇る建築?法隆寺。その耐久性だけでなく、回廊の配置の美しさなど、デザインとしての完成度も極めて高い。

(c)YOSHIO TOMII/SHASHIN KOUBOU /amanaimages

―― 材料だけでなく、デザイン性も建物の長(zhǎng)壽命化には関係がありますか?

藤森 : おおいにありますね。見(jiàn)た目が美しいから、みんな大切にして長(zhǎng)持ちするんです。何が美しいかの感性は、國(guó)によって異なります。例えば、日本には木の表面に塗裝を施さない白木を良しとする美學(xué)があります。海外では、だいたいニスやベンガラなどの塗料を木の表面に塗ります。法隆寺にも一部では塗られていたようですが、中世から安土?桃山時(shí)代の千利休の茶道で、白木の美が確立されました。以降、日本の伝統(tǒng)的な建物には白木が多く使われています。

利休による現(xiàn)存する日本最古の茶室「待庵」は、長(zhǎng)持ちしている建物の中では個(gè)人的に好きなものです。待庵は、言ってしまえば、人力で持ち上げられるような小さなボロ屋ですよ(笑)。でも何百年もの間、地域の人々から愛(ài)され重要な建築物としてあり続けています。使う方に愛(ài)され大切にされるということも、建物が長(zhǎng)持ちする條件としては欠かせないのでしょう。

次のページ:後編 藤森照信作品に見(jiàn)る、建築のサステナビリティ

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